ベロキスレビュー 没入型レビュー

【創作小説】もしも、三葉ちはるとベロキスを交わした”あの夏”に戻れるなら…。切ない記憶の物語。


検索窓に、彼女の名前を打ち込む。 「三葉 ちはる」

その隣に、どんな言葉を続けるか、少しだけ指が迷う。 結局、いつも同じだ。まるで魔法の呪文みたいに、気づけば打ち込んでいる。 「ベロキス」

Enterキーを押す前に、ふっと目を閉じる。 すると、今でも鮮やかに蘇る。 むせ返るような夏の匂いと、鳴り止まない蝉の声。 そして、少し困ったように笑う、彼女の顔。

これは、そんな検索をしてしまったあなたに贈る、もしも、あの夏に戻れたらの物語だ。

「ねえ、この本、もう読んだ?」

声のする方へ振り返ると、そこに三葉がいた。 夏休みの、誰もいない図書室。窓から差し込む光が、彼女の黒髪をキラキラと照らして、まるで天使の輪っかみたいに見えた。

彼女が差し出したのは、少し背伸びした恋愛小説。 「まだだよ。三葉は、もう読んだの?」 「うん。…すごく、良かったよ」

そう言って、少しだけ頬を赤らめる彼女。 その表情の意味に、当時の僕が気づくはずもなかった。

二人で並んで、本を読んだ。 時々、肩が触れ合うくらいの距離で。ページをめくる音と、窓の外の蝉の声だけが響く、静かな静かな時間。

「…ねえ」

不意に、彼女が僕の名前を呼んだ。 顔を上げると、真剣な眼差しで僕を見つめる彼女がいた。

「この小説の最後に出てくるキスシーン、どう思う?」 「えっ…」

予想外の質問に、言葉が詰まる。 「どうって…すごい、情熱的だなって…」

しどろもどろに答える僕を見て、彼女はくすくすと笑った。 そして、次の瞬間、信じられない言葉を口にした。

「…してみる?」

時が、止まった。 蝉の声も、風の音も、何もかもが遠くなる。 目の前で、いたずらっぽく笑う彼女の顔だけが、スローモーションのように見えた。

「う、そだろ…?」 「嘘じゃないよ」

彼女はそう言うと、ゆっくりと顔を寄せてきた。 シャンプーの甘い香り。 閉じた瞼の、長いまつ毛。

初めて触れた唇は、想像していたよりもずっと柔らかくて、温かかった。 小説みたいに、情熱的ではなかったかもしれない。 お互い、どうしていいか分からなくて、ただ、触れているだけ。

でも、それで十分だった。 いや、それが良かった。

僕らの初めてのキスは、甘くて、少しだけ切ない、夏の味がした。

…なんて、そんな都合のいい記憶は、僕の頭の中だけの創作だ。

本当の僕は、彼女の「してみる?」という冗談に、「ば、バカ言うなよ!」と顔を真っ赤にして返すのが精一杯だった。 「なーんだ、つまんないの」と拗ねたように笑う彼女の顔を、まともに見ることさえできなかった。

あの時、もしも正直になっていたら。 もしも、彼女の手を取っていたら。 僕らの夏は、何か違う結末を迎えていたんだろうか。

「三葉ちはる+ベロキス」

僕らが検索しているのは、スキャンダルなんかじゃない。 あの夏、言えなかった言葉。 あの夏、できなかった選択。 そんな、叶わなかった「もしも」の物語を、今もどこかで探し続けているのかもしれない。

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