ベロキスレビュー 没入型レビュー

【ショートストーリー】カフェ店員のこのみさん(26)とのベロキスは、ほろ苦いコーヒーの香り。常連客の僕だけが知る、彼女の秘密。


(…これは、あなたの行きつけのカフェで起こるかもしれない、ささやかな恋の物語です)

僕には、ささやかな日課がある。 仕事帰りに、駅前の小さなカフェに寄ることだ。

お目当ては、もちろん、ここのコーヒーが美味しいから。 …というのは建前で、本当の目的は、カウンターの中にいる彼女に会うためだ。

「いらっしゃいませ。いつものブレンドでよろしいですか?」

そう言って微笑むのは、この店の正社員、このみさん(26)。 丁寧にハンドドリップでコーヒーを淹れるその横顔を、カウンター席から眺めるのが、僕の一日の疲れを癒やす、何よりの特効薬だった。

彼女は、いつも笑顔で、誰にでも優しい。 でも、常連客である僕だけが知っている、彼女の秘密の表情がある。

それは、閉店間際、客が僕一人になった時にだけ見せる、少しだけ気の抜けた、アンニュイな顔だ。

「…はぁ、今日も疲れたぁ」

誰もいないことを確認して、カウンターに突っ伏す彼女。 いつも完璧な彼女が見せる、その無防備な姿が、たまらなく愛おしい。

「お疲れ様、このみさん」 「あ、〇〇さん(あなたの名前)!すみません、油断してました…」

慌てて顔を上げる彼女の頬が、ほんのり赤い。

「いいんですよ、いつも頑張ってるんだから。俺の前では、くらい、いいじゃないですか」 「…もう、そういうこと言う」

口ではそう言いながらも、彼女は嬉しそうに笑う。 この時間が、僕にとっては何よりも大切だった。

ある日のこと。 その日も、閉店間際の客は僕一人だった。

「はい、これサービス」

そう言って彼女が出してくれたのは、少しだけ形の崩れたチーズケーキ。 「新作の試作品?美味しそう」 「味は、保証しますよ」

二人で他愛もない話をしながら、ケーキを食べる。 彼女が笑うたびに、僕の心臓が、少しだけ音を立てる。

「…あの、〇〇さん」

不意に、彼女が真剣な声で僕を呼んだ。 「はい」 「いつも、ありがとうございます。閉店まで付き合ってくれて」 「いえ、俺が好きでやってることだから」 「…ううん。あなたが最後にいてくれるから、私、毎日頑張れるんです」

まっすぐな瞳で、そう言われた。 心臓が、大きく跳ねる。

気づけば、僕はカウンターから身を乗り出していた。 驚く彼女の、その唇に、自分の唇を重ねていた。

コーヒーの香りと、チーズケーキの甘い香り。 そして、彼女自身の、もっと甘い香り。

初めて触れた彼女のキスは、いつも僕を癒やしてくれる、ほろ苦いコーヒーのような味がした。

「…これ、反則ですよ、お客さん」

唇が離れた後、涙目で僕を睨む彼女。 でも、その手は、僕のネクタイを固く掴んだまま、離そうとはしなかった。

僕と彼女の、甘くてほろ苦い夜は、まだ始まったばかりだ。

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